ふりかえり

前回の彼とはもう会わなくなって、私は彼の事を忘れたくて色んな飲み会に参加してみた。

でも好きになれるような人はすぐには現れなかった。

 

そして男の人のことがどこかで怖い自分もいた。前回の事があってから、私はものすごく警戒心も強くなったし、隙を見せないように心がけた。

飲み会の後、車で送ってくれると言われても断るようにしたし電車でも送ってもらうのは駅まで、と決めていた。

 

あまり覚えていないけれど、たぶんその頃はスカートもあんまり履いてなかったんじゃないだろうか。

そのうち、就職して忙しくなって色んな事を忘れるかのように仕事にのめり込むようになった。

 

そしてその職場の同僚に誘われた飲み会である男性と出会った。

 

彼はとても穏やかでニコニコ笑っていたのが印象的だった。

飲み会の最中に彼の友人が手を滑らせて、持っていたタバコが彼の手の甲に当たったように見えた。

でも、彼は平気平気と笑って友人に言っていた。

 

帰りは1人の子が皆を車で駅まで送ってくれた。その時私は彼の隣だった。

飲み会中、席が離れていてほとんど喋っていなかった私たちは初めまして位の会話をした。

そしてパッと見たら彼の手の甲に真っ赤な跡があった。

タバコの火で彼は火傷をしていた。

え、それ大丈夫なん!?って聞く私に

彼はシーっていうジェスチャーをした。

きっと友達に聞こえてしまわないように。

そして口パクで大丈夫って言って笑った。

 

 

私は彼に「優しいね」って小声で言った。

彼は「優しくないよ、普通だよ」ってまた笑った。

 

たぶん、私はその時彼を好きになったのだと思う。