ふりかえり11

夜になってフラフラの頭で彼の実家に電話をした。付き合って初めてだった。

電話に出たのは彼のお母さんで、私は仕事用の口調で彼の在宅を聞いたがまだ帰っていないと言われた。名前と電話が欲しい旨だけを伝えて電話を切った。

 

するとすぐに彼から折り返し電話がかかってきた。彼のお母さんは私の口調がビジネスすぎて怪しさを感じたらしい。まぁ確かにいきなりそんな電話が掛かってきたらそうかもしれない。

 

彼は「どうしたの?今から携帯取りに行こうと思ってたやけど?」といつものようにのんびりとした口調で尋ねてきた。

私はそれまでずっと怖くて怖くてしょうがなかった。彼に携帯を見た事を責められるんじゃないか、とか。逆ギレされたらどうしよう、とか。

でもその呑気な声を聞いた瞬間、怒りが猛烈にこみ上げた。

「先に謝っておく。勝手に携帯を見た。ごめん。で、言いたいことわかるよね。」

私は本当に怒ったとき、声は低く冷たくなるらしい。泣き叫びたいのに、驚くほど冷静な自分がいた。

 

彼は一瞬絶句して、そのあと

ごめん、と言った。

そしてちゃんと話がしたいから会いにいっていいか?と尋ねてきた。

 

私は、話すことはないけど、携帯を取りにいますぐ来いと言った。